間違えないための輪行講座 〜 輪行用資材を考えよう【前編】

よく初心者の方が「輪行バッグを買いたいのだけど、どういうのがいいのでしょうか」という質問されている事があります。
すでに輪行を楽しんでいるライダーの方であれば、自分の経験から、アドバイスしてあげることはできると思いますが、ちょっと待ってください。
あなたの輪行に関する知識は、本当に初心者の方を導いてあげるのに相応しいアドバイスができますか?あなたは輪行バッグ製造メーカーの自社製品を売らんがためのいいかげんな宣伝に騙されてはいませんか?

この点をもう一度考えてみる必要があり、記事を書く事にしました。

「輪行バッグへの入れ方」などのノウハウは、自転車雑誌などでもしょっちゅう取り上げられているのですが、輪行バッグ類(箱とかもあるので、「輪行用資材」と総称することにしました。)の選び方などについては、ちゃんと書かれた記事を見た事がないので、これから輪行をはじめようという方はもちろん、海外ライドにチャレンジしようとしている方、すでに輪行を楽しんでいる方も参考になるかと思います。ぜひご一読ください。
(なお、この記事はロードバイク限定での記事になりますので、MTBなどの場合はバイクサイズ的に状況がある程度変わりますので予めご了承ください。)

 

■3つのタイプで輪行は分けて考える!

 

まず輪行バッグの選択にとって大事なことは、どうやって輪行するか、にあります。
ここでは大きく3つのケースが考えられます。

1. あくまでも自分がバイクを持ち運ぶ電車輪行の場合

2. バイクを運送会社に預けて運送してもらう場合(正確には「輪行」ではないですが)

3. 飛行機を利用する移動が伴う「飛行機輪行」の場合

この3つに大別されます。さらに3については3A. 国内線の場合3B.国際線の場合の2つについて分けて考える必要があるので、合計4パターンを分けて考える必要があります。なぜならばそれぞれに適した輪行資材(バッグや箱など)が異なるからです。

もしあなたが初心者からアドバイスを求められた時に、この4パターンのいづれの輪行のことを対象としているのか、という点について質問者に聞き返した上で、いづれかのケースだけのアドバイスを求められているのでしたら、その一部だけのことをアドバイスしてあげればいいのですが、そうではなく質問者自身がこの4つのパターンについて何も理解していない場合には、この4パターンについて明確な違いを説明し、それぞれに適した輪行バッグが違う、ということをちゃんとアドバイスしてあげないといけません。

それができないのであれば、あなたの知識はごく偏った一部にしか過ぎないことを認識し、その狭い範囲でのアドバイスであることをちゃんと質問者に伝えてあげるか、もしくはあなたがアドバイスするのではなく、この記事を教えてあげることをおすすめします。

それでは4つのパターンそれぞれについて考察していきましょう。

 

■パターン1:あくまでも自分がバイクを持ち運ぶ電車輪行の場合

 

この用途向けには非常に多くの輪行バッグが販売されていますので、選択肢は沢山あります。

ポイントは「ライドしている時には原則的には畳んだ輪行バッグを持ち歩かないといけない」という点と、「バイクを自分で持ち運ぶので、バッグ自体の衝撃吸収性やクッション性は必要ない」という点があります。輪行バッグをバイクで持ち運ぶ、という点では軽量でコンパクトなものほどベターということになります。

輪行バッグへの梱包や開梱とバイク組みたてが楽な前輪だけ外すタイプのものもかなり使われてきましたが、近年鉄道各社がこのタイプの輪行に対して認めない方向で動き出してきているので、これから購入するのであれば必ず前後輪両輪を外すタイプの輪行バッグを買いましょう。
先人達の努力によってJRや各鉄道会社に認めてもらってきた輪行という文化を失くさないためにも、「これからは両輪外し」を原則として輪行するようにしてください。

両輪外しタイプのものには、オーストリッチの輪行バッグに代表される「リアエンドやリアディレイラー部を下にしてフロントフォークを上にする縦型の輪行バッグ」と、「サドルとハンドルを地面側にする倒立タイプの輪行バッグ」の2種類があります。
前者だと「エンド金具」というものが必要になりますが、電車内での床面積が一番小さくなるので迷惑度は一番小さくなります。そのかわりに慣れるまでパッキングがやや難しいかもしれません。後者はエンド金具がいらない代わりにハンドル部分にサイコンなど、ハンドルより上部に出ている場合には外さないといけないなどの点もありますが、一番軽量コンパクトな輪行バッグがあるのはこのタイプです。軽量コンパクトさについては、生地が薄い程軽量コンパクトにはなりますが、その分耐久性などの点でやや劣ることもあります。
しかし、生地がしっかりしたボトルゲージ1本分くらいのサイズの輪行バッグだと、輪行予定がない時にわざわざ持ち運ぶ人はそんなにいないと思いますが、スーパーライトウエイトタイプの超コンパクト輪行バッグの場合には、自分の握りこぶしよりも小さいものもあるので、輪行の予定はなくても出先でのバイクメカトラブルや体調不良などで予定外に輪行で戻らなければいけない場合なども想定して「いつでも輪行バッグをサドルバッグなどに入れておく」といったこともでき、そのメリットは大きいと言えます。

ただし注意点としては、コンパクトさ重視のバッグの場合、自分のバイクのサイズが大きい時やシートポストがインテグラルで短くならない場合などで入らないケースもありえますので、気をつけましょう。サイズの大きなバイクの方は、できれば購入前に自分のバイクが入るかどうか確かめてみれればいいのですが…

いづれにしても多種多様な輪行バッグが、そんなに高価ではなく販売されているので、1つだけに決めないでタイプの違うものを複数種類使い分けていく、というのがいいかと思います。

rinko01-01参考:輪行バッグの大きさの違い。
写真の輪行バッグはどれもボトルサイズより小さいコンパクトなサイズのものです。
左端のボトルの大きさと比較してもらえればよくわかりますが、ちょうどボトルサイズのTIOGAコクーン(これは前輪だけ外して輪行するタイプのバッグです)と、その隣にあるのがコンパクトさで定評があるモンベルのコンパクトリンコウバッグシリーズ(左は前輪外しタイプのクイックキャリーで、右は両輪外しタイプ)、さらに一番右にあるのは両輪外しタイプでは最小最軽量かそれに近いと思われるPocket inの輪行バッグです。このPocket inは相当コンパクトなので、私は「輪行予定がなくてもトラブルに備えていつでもサドルバッグに入れて持ち運ぶ」ようにしています。ここまで小さいからゆえにできる技ですが・・。

ちなみに、私のバイクはフレームサイズ570でシートポストはインテグラルという、輪行バッグに入れるにはかなり厳しい大きめのサイズなのですが、最小のPocket itでもなんとか入ります。(パツパツにはなりますが)
それから、写真にある左側の2つは、前輪だけ外すタイプのものなので、最近はもう利用していません。右側の2つが現在でも使っているものになります。

 

■パターン2:バイクを運送会社に運んでもらう場合

 

JCAメンバーなどで輪行タグ(今はサイクリングタグと言うそうです)を使うなどしてヤマト運輸のヤマト便(通常のヤマト便とは違い、輪行タグを利用する場合には「サイクリングヤマト便」というそうです)で自転車を送る場合などの梱包がこのパターンです。正確には「輪行」とは言わないのですが、この運送パターンでも輪行バッグを使うので、ちゃんと考察しておく必要があります。

このパターンでは自分が大事にバイクを運ぶのと違い、運送会社にバイクを運んでもらうことになるので、バイクを守るためにクッション性があり衝撃吸収できる素材と作りの輪行バッグが必要になります。JCAのメンバーになり「輪行タグ」というものを購入すると、ヤマト便でのバイク運搬が格安の料金(通常のヤマト便の料金の3割程度の料金)で利用できるので、日本国内であれば利用価値はかなりあります。

たとえばツールド沖縄などに参加する場合に、現地滞在先の宿泊施設にあらかじめ了解を得てあれば、往復をヤマト便でバイクを送る、ということもできますし、また違ったパターンとして、行きは自走もしくは電車輪行(パターン1での輪行バッグ使用)プラス途中から自走で、帰りはバイクを家まで送って手ぶらで帰る、というようなこともできます。

このパターン2でもJCA輪行タグによるバイク運送の場合には、規定により箱(ダンボールやプラダンボール)やハードケースが使えないので、オーストリッチのOS-500などの緩衝材入りのバッグが最適な輪行バッグになります。またシーコンのエアロコンフォートも使えます。
なお、自転車運搬用の箱の利用に関してですが、一般的なヤマト便としては箱でも送れますが、輪行タグを使うよりも運搬費用がかなり高くなってしまうので、運搬コストを抑えたい場合には、輪行タグ+箱以外のバッグ、のセットにしましょう。(輪行タグを使うとヤマト便で正規にバイクを送る料金の3割前後の料金でバイクを送ることができるので破格です。)

もちろん、運搬時のトラブルを避けるために、高い正規ヤマト便料金を払ってでも箱やハードケースで運びたい、という人もいると思うので、それは考え方次第なので、別にかまいませんが、大事なことは、片方の選択肢しか知らないのではなく、安く運ぶ方法もあれば高い方法もあり、それぞれにメリットやデメリットがあるということを理解した上で、自分がどちらにするかを選択する、ということです。
上部箇所を訂正(削除)します。(訂正については、このあとページ下部に通常のヤマト便でのボックス運送コストの現状のことを追記しましたので、そちらをご覧ください。)

この宅配運送を利用すると例えばこういうパターンも可能です。
「東京から淡路島ロングライドに参加する場合で、行きは電車輪行で途中の神戸まで行き、そこから自走で淡路島入りするが、帰りは淡路島からバイクを自宅に送ってしまい手ぶらで帰る」
こういう場合には、往路にOS-500やシーコンを使うことができないので、あらかじめ復路用にOS-500などのバッグを現地宿泊先まで送っておき、往路はパターン1の電車輪行用のコンパクトな輪行バッグを使う、という合わせ技で行く手もあります。

特にライド後で疲れた復路に混んでる電車に乗らないといけない場合などは、この合わせ技を使えばラクもできるし、さらにいろいろなパターンで往復が楽しめるので、ぜひ覚えておいてもらえればと思います。

(こういう場合は、三つ折りに畳んでコンパクトになるOS-500は安く送れるので便利です。バッグだけを先に現地に送っておく、という点では、あまりコンパクトにできないシーコンエアロコンフォートは残念ながら不向きです。)

rinko01-02写真は最近海外ツアーでは全く出番のなくなってしまったOS-500。国内イベントでライド後に現地から家まで輪行タグで送ってしまう時のもの。
手ぶらで帰れるのはラクなので、以前は国内イベントの帰りはよくこうしていました。

 

なお、サイクリングヤマト便に関しては、OS-500の場合には、運搬時にちゃんとした上下通りに運んでくれずに、90度回転させて縦横を変えて運搬されてしまう、という報告が知り合いのバイク乗りの調査で上がってきています。
私自身何度もサイクリングヤマト便を利用してバイクを運搬してもらったことがありますが、今までに一度もバイクが壊れたりとかいう被害にはあっていません。しかし絶対安全か、と言えば、必ずしもそれは約束はされない、ということは覚えておいたほうがいいでしょう。(リアディレイラーハンガーが曲がってしまった、という体験をブログに書かれている方もいますので、リアディレイラーは外して梱包するほうが安全だと思います。)

そのためにサイクリングヤマト便で送る場合、バイクの保険代として10万円につき100円を払って保険をかけておくことができますので、万一のことを考えて保険には入っておきましょう。
(なお、サイクリングヤマト便の送料は、予め着払いの伝票をヤマト運輸からもらっておき、それを使えば、バイクの集荷を依頼して集荷を待たずに宿にバイクを置いたまま自分だけ先に帰路につくこともできますが、この保険代は着払いができないので、あらかじめ金額を決めておき、集荷前に自分が移動する場合には、伝票入れに小銭を入れておくか、宿の人に頼んで保険用の小銭を預かっておいてもらうなどの必要があります。)

サイクリングヤマト便で東京23区からバイクを送る料金は北海道で約4,000円、関西で約2,500円、九州で3〜4,000円、沖縄で約7,000円(いづれも片道)となっています。

これをダンボールなどのボックスで一般のヤマト便で送るとそれぞれ約3倍くらいの料金になるので、いかに輪行タグの価値があるかわかると思います。
ご指摘があり調べましたが、現状ではボックス関係での通常のヤマト便の送料は、JCAがサイトに記載しているほど差額がなく、203cmボックス(バイクポーターProなど)ではサイクリングヤマト便と同額、それ以上の230cmボックスなどではサイクリングヤマト便との差額が1.5倍(〜2倍弱)程度であることが判明しましたので、訂正させていただきます。なお、OS-500やシーコンなどの場合は、現状でも通常のヤマト便とサイクリングヤマト便とでは料金に倍近い差があるようです。

<参考>JCAサイクリングタッグ https://www.j-cycling.org/ctag.html

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ということで「1.電車輪行」と「2.サイクリングヤマト便などの宅配輪行」について見てきました。後編では一番難問の「3.飛行機輪行(国内線、国際線)」について書いてみたいと思います。

後編アップしました。間違えないための輪行講座〜後編
 

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